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越前奉書とは越前で作られた上質の和紙のことで、16世紀には紙座あがあり、今立郡大滝郷をはじめとした五箇村地方で作られているものが有名でした。江戸時代になると、幕府や大名などのあつらえ物と、三都に出す商物をかなりの量生産しましたが、後期になると似たような紙類があちこちで作られるようになったことで売れ行きが落ち、紙すきの農民は困窮し、御用紙屋の大商人から原料を借りる、問屋制前貸しに取り込まれていきました。越前地方では早くから紙の生産が行われておりました。

なお、奉書とは主人の意志を奉じた従者の署名により発給する文書のことを言い、実教書や院宣などといったものがこれですが、それを記す公文書用紙のことも指します。この用途のため、江戸時代には各藩によって漉かれていましたが、越前の奉書は日本のものが一番だと高く評価されていました。明治時代以降は純楮の伝統的な越前奉書はまれなものとなりましたが、浮世絵木版画の復興が試みられるなど、新しい需要に応じ、高度な浮世絵木版画の復興が試みられるなど、新しい需要に王子、高い製作技術が受け継がれてきました。

この越前奉書の製作方法ですが、良質の原材料を選んで手間を惜しまない昔ながらの手作業に特徴があり、手打ちによる叩解や、紙だしの行程に代表される、丁寧な原料処理、さらに伝統的な白土の添加、手間暇をかけたゆるやかな抄紙、板干しの乾燥法があります。今では越前奉書の使い道は版画用紙となっていますが、書画用紙や日本刀のぬぐい紙、書簡用紙などにも使われています。紙質については強く、格調高く重厚な風合いが残っています。

越前奉書はまた芸術的価値が非常に高く、工芸史上重要であるため、地方的特色が顕著な工芸技術と言えるでしょう。この越前奉書を使った作品には、小倉遊亀の「花屑」があります。まだ、この越前和紙を見たことがないという方もいらっしゃるでしょうが、ぜひ1度手でふれてみていただきたいです。