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松田権六は、明治29年に金沢市に生まれ、明治43年に石川県立工業学校漆工科に入学し、その後東京美術学校漆工科に入学した後教授に就任しました。1922年には日本芸術院会員となり、1925年には文化財保護審議会の専門委員となり、37年には日本工芸会理事長、その後東京芸術大学名誉教授になり、文化功労者になりました。彼は東京芸術学校を卒業後、早いうちから美術工芸界の中で頭角を現し、客船の室内装飾、国会議事堂の御便殿の漆芸装飾などといった作品を多く手がけており、戦後の混乱期の中から伝統工芸を復興させ、文化財保存事業の指導や国際的文化交流に努めました。

1955年になると彼は日本工芸会を設立。日本伝統工芸展をスタートさせたり、戦後高まったとされる芸術文化の再興の指導者になるなどと貢献し、たくさんの後進を育てていきます。また、螺鈿や平文などといった古典的技法を現代化させ、平和の到来を感じさせる温雅さと伸びやかな華麗さが作品の随所に見られます。

彼はとりわけ蒔絵のデザインを重んじたことでも知られており、生まれた土地である金沢で加賀蒔絵の基礎を身につけました。また、日本画も学んでおり、楽浪漆器の修復に携わるなどといった幅広い素養と経験を身につけていきました。ですが、その道のりは西洋に影響を受けた同年代の他の作家たちとはかなり違っており、彼は日本の古典的作品の数多くの研究をバックに自然の生命観を意匠にへと発展させ、素晴らしいデザイン感覚を作品へと繋げていきました。

なお、彼が作家として活動を始める大正時代から昭和の始めにかけて、それまで主に画家や図案家がやってきた工芸の図案製作を工芸家自身が行うようになり、彼らの意識にも大変変化が生まれた時代だと言えるでしょう。彼の代表作品としては漆絵梅文碗などがあります。蒔絵の素晴らしい作品となっており、ぜひご覧になったことのない方は1度ご覧になってみていただきたい作品です。