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九代岩野市兵衛は越前和紙を作る人で、和紙作りを続けて9代目となります。この越前和紙の主な原料とは、雁皮やみつまた、こうぞ、麻などとなっています。これらすべての植物はどれも繊維がとても長く、丈夫でしなやかなため、昔は奉書紙としてかなり大量に作られていました。現在では、木版画や日本画などに使われています。

越前和紙は他の素材を混ぜたりして加工方法の種類が多いのが特徴ですえが、彼は楮だけで漉く紙にこだわって作っています。原料となるこうぞは九頭竜ダムの近くにある地域で取れるそうですが、だんだん減ってしまったため、茨城県の那須こうぞを取り寄せて作っているとのことです。まさに素材そのものの特性を大事にするので、こうぞを煮る際にはソーダ材を使う以外、漂白剤などの化学薬品は一切使用しません。

越前和紙作りとは、まず最初に乾いたこうぞの皮をはいで、白皮を大釜で煮て、変色している部分やちりなどを手で一つ一つ取り除いて、さらに叩き、繊維を細かくしてためた水に入れて溶かします。さらに、これを前後に揺らし繊維をならしていきます。こういった紙を漉く作業は同じ厚さの紙を作る必要があり、熟練技術が必要となります。さらに漉いた和紙は重ねたままで水気を絞り、1枚１枚を板に貼って、乾燥室でじっくり乾燥させます。

彼の紙を使う木版画家の中には、1枚の絵を作り上げるのに数百回も色を刷り込むことがあるそうです。なので、紙の頑丈さは大切ですし、大変発色がいいという評判から、多くの木版画家からの発注を受けているそうです。書や日本画、浮世絵、芸術が完成するためにはこの越前和紙の存在がなくてはならないものなのです。なお、横山大観などもこの越前和紙を使っていたと言われています。