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十四代目今泉今右衛門は江戸時代、佐賀県鍋島藩御用達だった窯、鍋島藩窯の御用達赤絵師を代々務める今泉家に次男として誕生し、鍋島藩窯では一般的な窯で焼かれていた伊万里焼とは違い、販売を目的とせず将軍へ献上したり、幕府の要人や大名などへ贈呈するために作品が作られていました。今右衛門は武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科を卒業後、陶芸作家である鈴木治氏に師事し、1990年以降になると父でありまた人間国宝でもある十三代目今泉今右衛門のもと家業に従事、色鍋島を中心とする色絵磁器の技術を習得。

当時販売に専念する兄に代わって2002年に十四代目に襲名したあと、家伝である色鍋島の技術を中心に江戸時代から鍋島焼に使われている墨はじきといった技法を進化させたオリジナルの雪花墨はじきという技術を駆使しています。墨はじきではまず最初に墨で文様を描いてその上を染付で塗り、その後素焼きの窯で焼くと墨が飛び白抜きの文様が現れるというものです。古伊万里ではほとんど絵具を使って描かれていますが、手間のかかるこの墨はじきを使って背景の色合いを微妙におさえるのは鍋島焼だけが用いる技法です。

また、今右衛門は上絵付けの際にプラチナを施し、変幻的な白金色を輝かせる技法であるプラチナ彩を導入。色絵磁器の表現に新生面を開きました。伝統技法の上に独自の作風を確立。現代感覚にあふれており、芸術的に優れていると好評かを得ています。自分自身の作風について彼は、陶芸という仕事は決められた価値観を表現するものでなく、その時どきの自分の想いを固定観念にとらわれることなく表現する仕事だと述べ、今右衛門の各代がそれぞれの時代にチャレンジし、新しい展開を切り開いてきたという伝統を引き継ぎたいと考えています。

この今右衛門の代表作には色絵吹墨墨はじき草花更科文花瓶があります。まだ彼の作品を見たことのない方は、ぜひこの機会に一度ご覧になってみてはいかがでしょうか？