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大西勲という漆芸家についてご存じでしょうか？人間国宝に認定されているこの大西勲についてここではご紹介してみたいと思います。

日本の漆器は以前海外でジャパンと呼ばれており大変珍重されました。中国製の陶器がチャイナと呼ばれたのと同様、東洋を代表する工芸品として広まってきました。漆とは大変優れた特性があり、接着力が素晴らしく強く、防水性や耐熱性にも優れており、現代の化塗料であってもこの漆にかなうものはない塗料だと言われています。さらに、漆を塗った表面はつややかで光沢があり、ぬくもりさえ感じます。

大西勲は2002年に漆工芸家として人間国宝に認定されます。彼が認定を受けたのはきゅう漆という技能についてです。漆工芸の技能分野において、蒔絵や螺鈿、きんま、沈金などの技法がありますが、きゅう漆とはただ単純に漆を塗ることを言います。

漆芸とは一般的に分業によって作業されますが、彼の場合は材料づくりから漆塗りまですべての工程を一人で行うことにすごみがあります。特に複雑な工程である曲げ輪づくりで彼の右に出る者はいないと言われています。彼は、各段階で塗りと研ぎをちゃんと仕上げ、それをくり返すことによって漆の美しさを引き出していく、と言っています。また、自分はうまくないし、丁寧に作業しないと常に思っており、加飾を施さず漆だけで行うやり方は、正直にやるのみ。人間国宝に認定されると周りは私のことを作家と思うでしょうが、そんなことはなく、あくまで漆職人であり、それも儲けや効率を度外視した愚直な職人です、とも言っています。

彼の代表的な作品としては2010年に製作された曲輪造盛盤があります。この作品は冬のオリオン座を表現した作品となっており、小さい頃に夜空を見上げている自分の姿を思いだして作ったそうです。外側には三日月があり、その部分だけ浮かび上がるように三日月の弧の部分は曲輪に段差をつけ、高くなっています。