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藤原啓という作陶家をご存じですか？彼の略歴と作風、代表作について書いてみましょう。藤原啓とは岡山県備前市に生まれた陶芸家で、人間国宝に認定されています。39歳というかなり遅い時期から備前焼をはじめて人間国宝になったことから考えますと、かなり陶芸家の中でも異色だと言えるでしょう。

1899年に彼は岡山県備前市に生まれ、陶芸より小説や俳句などにかなり才能を開花させ、子どもの頃から雑誌を読んで、その上投稿までしていたそうです。その後、文学の世界を志し、編集者へと就職しました。当時は映画や演劇などといった幅広い芸術に触れており、さらに1922年になると初めての詩集である夕の哀しみを出版。さらに、出版社を退職後は作家へと転向したのです。ですが、文学の世界で生活することに限界を感じたため、1937年にはその道をあきらめ帰郷します。その次の年から備前焼の製作を行うようになったのです。

彼は初めての備前焼においての人間国宝である金重陶陽から指導を受けてその技法を学んでいきました。このような遅いスタートではありましたが、以前文芸を学んでいたことなどから備前焼に芸術性を盛り込みました。陶芸を始めたのが遅いというデメリットより、はじめるまでに培ってきた芸術性が花開くことのメリットの方がより大きかったようですね。

金重陶陽が安土桃山時代に作られたとされる繊細な備前焼を製作した一方で、彼はどっしりとした力強い素朴な作風の作陶家でした。桃山時代の技法を使いながらもそこに現代的な独創性をプラスしました。今は当然のような特徴のある備前焼ですが、彼より以前には存在していませんでした。それだけ彼の作品はかなり独創性に優れており、文学の世界で芸術を学んでいたからこそ違う分野同士が融合し、新しい作風が生まれたと言えるでしょう。

なお彼の代表作としては備前徳利などがあります。備前焼らしさを感じられる素晴らしい徳利ですので、ぜひ一度ご覧になっていただきたいです。