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松井康成は1927年に長野県北佐久郡に生まれ、17歳の頃に茨城県笠間市に疎開、明治大学文学部を卒業後は月崇寺の住職の娘と結婚し、住職になったあと33歳にお寺の境内において窯を作り、本格的に作品作りを始めました。当初は中国や日本、朝鮮の古陶磁の習作を作っており、さらに1966年には栃木県佐野市において活躍していた田村氏に師事し、田村氏は練りあげの才能を見抜いて特化するように助言したという話が残されています。そこから数年後の1971年に日本伝統工芸展において日本工芸会総裁賞を受賞し、さらに1973年の日本陶芸展において最優秀賞・秩父宮賜杯を受賞し、その才能が広く認められることになります。同展では白地に灰色の龍泉が素晴らしい鉢が出品されたようです。

彼の創意工夫はろくろでの成形と色の鮮やかな顔料に特徴があり、ロクロの成形にはある工夫を使って顔料の発色を妨げない白のカオリンなど、素材にも厳選を重ねています。 まず、練りあげにおいてはロクロを使うと模様が流れてしまうので、ロクロに円筒を使い、粘土を巻き付け模様を整え、さらに円筒を抜き取りロクロを回して遠心力によって内側から外側へと素地を膨らませました。外側を触らないようにして内側に手を添え、成形を行ったとされています。さらに、少しの量で鮮やかに発色する顔料を用い、このおかげで同根異色の土を作ることができ、ロクロの工夫と質のいい呈色材のおかげで誰もまねできないような作品を多く生み出しました。1993年になると彼は国の重要無形文化財である練上手保持者の認定を受けました。

彼の作品はつやのある感触に淡い色のようにはっきり発色させたものもあれば、ざらついた感触と繊細な色の変化を楽しめるような作品など、多岐にわたっています。時には複雑な練りあげ模様を施し、制御しつつそれぞれの作品に色鮮やかな練り込みを施し、彼はいわば練上手の現代作家と言っても過言ではないでしょう。

彼の作品には練上壺などがあり、どれも素晴らしい作品となっています。