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小森邦衞という漆芸家についてここではご紹介してみましょう。小森邦衞は石川県輪島市に生まれた作家で、中学校を卒業後に箪笥など、和家具を作る職人となりましたが、その後20歳の頃漆工芸の道に入り、輪島塗の師匠の弟子になりました。地元にあった漆芸技術研修所において人間国宝だった松田権六のほか優れた指導者の教えを受け、漆工芸の作家を目指すようになります。

ですが、作家への道は大変厳しいもので、登竜門とされていた公募展にも6回連続で落選してしまい、鳴かず飛ばずの苦しい生活を強いられました。こうした苦境を彼は自分独自の道を切り開く作品によって乗り越え、漆芸の道に進み約40年後の2006年には漆塗り技術の重要無形文化財保持者に認定され、人間国宝となったのです。

なお、輪島市とは能登半島の中央に位置し、輪島塗で有名な土地です。また、塗り師とは漆器に布着せを行い下地をつけて中塗りし、上塗りをしていろいろな工程を経て、最後に上塗りする作業を行う人です。彼は30畳ほどの工房に移住して漆芸を続けてきました。下地を付ける際に上塗りをするのにいい時期があり、時期的なタイミングを見計らって作業を行います。

彼にとって今は日本伝統工芸展がもっとも大切な展覧会となっており、自分の作品を見たり、他の作品を見ることによって、帰る際に次の1年間のスケジュールを頭の中で組み立てるそうです。日本伝統工芸展の審査員も毎年ではないですが、行っています。

彼の作品は色合いが大変素晴らしく、留塗りという技法や朱の漆を使って塗り、最後にすき漆という透明度の高い漆を塗っていきます。なお、竹を編んだ網目の引っ込んだ場所に漆が余計にたまるため、そうすると網目に陰影が出ます。さらに、側面の曲げわの部分には朱のとめからうるみ色のとめにグラデーションを作り、その上にすき漆をかける、という技法を行っています。彼は41歳の頃にNHK会長賞も受賞しています。なお、彼の作品には木地呂酒盃などがあります。