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吉田美統とは1900年から続いていた錦山窯の3代目として生まれ、子息を含めて5人の職人を抱えています。戦後大変厳しい時代から技法である釉裏金彩と出会い、さらに現在の作風を確立するまでの道のりは大変なものでした。

彼は高校時代に陶芸の修業をはじめており、戦時中職人は兵隊にとられ、燃料もほとんどなく、物価の値上がりを防ぐために公定価格が制定され、国から許可されたものしか作れませんでした。錦山窯というのは初代、2代と金彩色絵いわば庄三風と言われる作品を得意としていた窯でした。彼が9歳の頃2代目が早世したので、技術は窯の職人から得ました。彼はコピーではなく新しいことをしたいという想いは修業時代からずっとくすぶっていたと言っています。

彼に転機が訪れたのは昭和43年のことで、陶芸作家である加藤土師萌の遺作展でした。作品に金箔を貼って模様を描いてその上から釉薬を塗って焼成するといった釉裏金彩という技法に彼は衝撃を受けて、同じ金であってもこのような斬新な表現方法があったのか、と息を飲んだそうです。このことがきっかけで彼は釉裏金彩の世界に入って誰もやったことのない蝶や花などをモチーフとした具象表現を追い求めたのです。1万分の3ミリ、1万分の5ミリといったごく薄い金箔を貼って、厚いものだとはっきりした金色、薄いと釉薬に溶けあうような金色を表現。

金箔を模様の形に切り分けるという過程も簡単ではなく、裁断の際に静電気が発生し、金箔が刃についてしまいました。様々な鋏を使った結果、知り合いの医師によって医療用のものを勧められたことでその切れ味にたどりついたそうです。こういった手法を確立するために初めての出品まで4年ほどの年月がかかったそうです。

なお、彼の作品には芙蓉や牡丹などといった植物がたくさん描かれており、これから描いてみたい題材はと尋ねると、これまでとは違って天女を描いた幻想的な世界で、人の顔の奥行きを金箔と釉薬を使って表現したい、と語っています。なお、彼の代表作には金襴手花唐草文ぐい飲みがあります。