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室瀬和美とは漆工芸の中でも蒔絵で重要無形文化財として認定されている人で、彼が得意としているのは研出蒔絵をいう技法で、漆地の上に漆で文様を描いてまだ固まらないうちに金銀の粉や色乾漆粉などを蒔きつけるものです。漆が固まってから再度また塗り、硬くなった後研いで磨きをかけ、最初に描いた文様や金銀粉などを表に出す手法、つまり何層にも金と漆を重ねてどこまで研ぎあげるか、ということが重要になります。 彼はその中でも研ぎの工程で図案に立体感を持たせたものを作っています。

彼の代表的な作品にエビが泳ぐ様子を蒔絵に描いた箱があります。金粉をたくさん見せ、強い金の色を出す部分と、沈んだ漆の飴色がかった金の色にする部分を使い分け濃淡を出し、生き生きとした立体感が生まれています。そのまるで引き込まれるかのような奥深い色合いに漆と金の両方の美しさを感じることができます。昔の蒔絵というのは平面的なものが多かったようですが、彼の作品のような濃淡を出す表現というのは現代的な感覚だと言えるでしょう。

さらに、彼は過去の技法の研究、文化財の修復なども行っており、その中には今では伝わっていないような技術が発見されることもあります。どうして文化財の研究を始めたのかと言うと、学生時代の恩師に勧められたからだそうです。自分が製作した作品が傷んでしまい、何百年前の人も残念がっているだろうから、それを修復してあげればとアドバイスをうけたとか。彼は確かに自分の作品が傷んでしまうと残念だし、昔の人の作品を直してあげようと考えたそうです。過去の作品に触れつつ、技術やその時代の心を学ぶ、その上現代にあった感覚で新しい蒔絵の表現を生み出していく、その中で彼の作品はできあがっていくのです。

さて、彼の代表作としては、桜蒔絵香合（さくらまきえこうごう）、蒔絵螺鈿方箱「春萌」（まきえらでんほうばこ「しゅんぼう」）などがあります。ぜひ、一度ご覧になってみて下さいね！