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輪島塗の沈金技術保持者である人間国宝の前大峰は本名を得二と言い、明治23年に石川県鳳至郡で生まれ、38年に粟蔵尋常高等小学校高等科を卒業後、輪島で当時沈金佐助と呼ばれた名工である三代目橋本佐助に師事、昭和4年第10回帝展で蟹と雑草文沈金丸盆が初めて入選しました。その後、第11回帝展で「遊鯰沈金彫手筥」、第13回帝展「漆器雉子沈金衣裳筥」第15回帝展「猫飾筥」、昭和11年新文展第1回展「秋乃野文庫」第5回新文展「粟鶉飾筥」などといった作品により沈金作家として有名になり、昭和16年になると石川県立工業学校教授嘱託となり、後進の指導に当たりました。戦後は日展でもっぱら活躍しました。

主な作品としては、昭和21年第2回日展のひな鶏飾筥、第5回「漆器蘭と猫の図小屏風」、昭和37年「猫文飾筥」などがあります。さらに、第4回、第10回になると日展の審査院や第8回においては参事として推薦されました。昭和30年には重要無形文化財保持者つまり人間国宝に認定され、昭和33年には日本工芸会の理事になり、また皇居仮宮殿棚飾用飾筥の御用も務めています。翌年には石川県伝統工芸展において好評を博したとされる沈金けはい飾筥は文化財保護委員会の買い上げとなりました。

彼は輪島塗の素朴な沈金技法を新たに開発し、平面的で品位があまりないとされていたその技術を豊かで芸術性の高いものとし、その功績をたたえられました。さらに、石川県文化財功労者や輪島市名誉市民、紫綬褒章を受章しています。

なお、彼の代表作には次のようなものがあります。秋草鶉沈金文庫は昭和30年代に作られたもので、輪島漆器商工業協同組合が所蔵しています。さらに、「沈金猫文　けはひ　飾筥」は昭和38年に作られたもので、石川県立美術館の所蔵となっています。最後に沈金夕月文盆は昭和38年に作られ、石川兼輪島漆芸美術館所蔵の作品です。どの作品も素晴らしいものばかりですので、一度実際にご覧になってみてはいかがでしょうか？