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平良敏子は昭和〜平成の染色家です。 　大正10(1921)年に生まれ、芭蕉布の重要無形文化財保持者(人間国宝)でもあります。

　平良敏子が生まれ育った沖縄県国頭郡大宜味村喜如嘉は戦前から芭蕉布作りが盛んな村でした。 　彼女も家の手伝いとして自然に芭蕉布の糸積みや機織りを身につけていきます。 　昭和19(1944)年平良敏子に青年学校の先生から本土の工場で働く「女子挺身隊」への誘いがありました。平良敏子はこれにすぐ応じ第四次沖縄県勤労女子挺身隊として、倉敷の紡績工場で働きます。平良敏子の働きぶりは立派でここで挺身隊のリーダーになります。 　そんな沖縄の挺身隊にとりわけ気を配っていたのが琉球文化にも造詣の深かった倉敷紡績の大原総一郎社長でした。 　しかし戦局は日増しに苦しくなり、沖縄玉砕の情報も流れる中平良敏子は少しでも軍人さんのためにと仕事を続けます。工場の作業が中止となり、身寄りのあるものは帰るようにと言われても自分はリーダーだから皆を置いて帰るわけにいかないと、平良敏子はそのまま働き続けます。 　そんな平良敏子に、当時柳宗悦の民芸運動に参加していた大原社長は沖縄の文化を倉敷に残そう、機を織ってみないかと提案します。 　そこに染色家であった外村吉之介が招かれ平良敏子らは必死で機を勉強してゆきます。

　それから昭和21(1946)年やっと故郷に帰ることができた平良敏子は暫くは日々の暮らしに精いっぱいで芭蕉布に着手できない状態でしたが、昭和26(1951)年やっと芭蕉布の織りに向き合うようになりました。 　芭蕉布作りは芭蕉を育てる人、手入れをする人、切り倒す人など人手がいりますし、糸の扱いにも熟練の技術がいるものですが、平良敏子は厳しい生活の中からなんとか金銭や作り手が辞めないよう工面し芭蕉布作りの努力を重ねます。

　やがて平良敏子は糸芭蕉の栽培から絣結び，染色，製織に至るまで全ての工程に精通するようになり、長年研究を重ね常に芭蕉布の新たな可能性も追求していきます。 　こうしてできあがった彼女の芭蕉布は清新で現代感覚にあふれる独自の作風を確立し，高い評価を得ています。 　平成12(2000)年、芭蕉布の重要無形文化財保持者(人間国宝)にも認定されました。 　今なお芭蕉布の普及と後継者育成に尽力している人物でもあります。