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銅鑼は茶道具の一つだと言うと驚かれるかもしれませんね。 ですが、銅鑼とは茶席に入る際の合図として鳴らされる、れっきとした茶道具なのです。 流派には関係なく使われるもので、銅鑼が日本において使われるようになったのは一説によりますと秀吉が中国から持ち帰ったのが最初だと言われています。 もともとは戦場の合図として使われていましたが、その音の華麗さに茶の席でも使われるようになったとも言われています。

なお、美しい銅鑼の音色を出すためには繊細な作業と大変な力仕事が必要だと話すのは重要無形文化財保持者に認定された銅鑼作家である魚住為楽という人です。 実際、銅鑼を叩いてみると澄んだ低い音が体に伝わってきます。

銅鑼づくりとは錫と銅とを併せてさわりと言われる合金を使い、熱したこの合金を型に流し込んで基本になる鋳物を作ります。 さらに、そのすべてが完成するわけでなく、最後に鋳型から取り出す際にヒビが入っていると、それまでの苦労は無駄になってしまうのです。 鋳物の中でも原始的とも言える方法で作るので、作ったうちの半分は失敗するとか。

できた鋳物の内側をさらに金づちで打って、分子密度を高くし、表面を削って模様を付けます。 鉄のやすりの棒を使い鉛色の表面を削りますと錫のような銀色が現れてきます。 削り作業は亀の甲羅の模様を細かくつけていくと教わっているそうです。 彼は銅鑼を叩く練習をする方が向いているとおっしゃっています。

彼は日本でたった一人の銅鑼職人で、伝統が途切れてしまわないように後継者の育成が最大課題ですが、彼の息子が後を継ぐことはすでに決まっていて修業に励んでいるそう。 彼も人間国宝であった祖父に師事、銅鑼作家の道を歩んできました。 祖父からさらに孫に伝えられるわびさびの音色。 銅鑼の音とは、茶室に入る前にまた一度心を落ち着かせるようなそんな伝統の音色です。 なお、彼の作品にはほかにも砂張水指（さはりみずさし）や砂張鉦（一尺二寸）（さはりしょう）などがあります。