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　民俗学とは学問領域のひとつです。高度な文明を有する諸国家において、自国民の日常生活文化の歴史を民間伝承と資料を通して再構成しようとする学問です。民俗学は、風俗・習慣・伝説・民話・歌謡・生活用具・家屋など古くから民間で伝承されてきた有形無形の民俗資料をもとに、人間の営みの中で伝承されてきた現象の歴史的変遷を明らかにします。近代化によって多くの民俗資料が失われようとするとき、消えゆく伝統文化へのロマン主義的な憧憬やナショナリズムの高まりとともに誕生した学問として知られています。日本の民俗学は、イギリスのケンブリッジ学派の強い影響をうけて、柳田國男や折口信夫らによって近代科学として完成されました。

　民俗学と人間の生活との接点として次のようなものが挙げられます。誕生から育児・結婚・死に至るまでさまざまな儀式が伴っています。こうした通過儀礼とは別に、普段の衣食住や祭礼などの中にもさまざまな習俗・習慣・しきたりがあります。これらの風習の中には由来が忘れられたものや時代とともに変化して元の原型がわからないまま行なわれているものがあります。民俗学はこうした習俗の綿密な検証などを通して伝統的な思考様式を解明しています。

　研究の方法として次のようなことが挙げられます。研究の対象が自民族の基層文化である場合、他民族の事例を自民族の研究の補助材料として使う場合が多いとされています。文献や資料以外で研究する場合、現代社会に残存する文化・風習・思考の様式を重視します。研究手法としてフィールド・ワークを用いて、材料収集を行います。また、未開であると考えられる他民族の文化・風習・思考の様式を研究上の材料または補助材料とすることもあります。

　最後に、民俗学に関する本を紹介します。八木 透・政岡 伸洋『こんなに面白い民俗学 (図解雑学)』を取り上げます。私たちの生活はさまざまな慣習・行事・言葉に満ちています。例えば、正月に餅を食べるのが慣習になっています。多くの人にとって当たり前のことになっていますが、なぜ正月に餅を食べるようになったのでしょうか。他に、「黒猫を見ると不吉なことがおこる」「人のうわさも75日」などと言われますが、このような俗信・ことわざは何を根拠に広まったのでしょうか。この本では、民俗学が扱いうるありとあらゆる主題を集め、イラストとともに、わかりやすく、おもしろく解説しています。

　次に、宮田 登『民俗学への招待』を取り上げます。なぜ私たちは正月に門松をたて雑煮を食べ、晴れ着を着るのだろうか。雛祭りやクリスマスなどの年中行事。富士講などの民間信仰など、民俗学を通して日本人の文化の深層を探ります。