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　中村勇二郎は昭和時代の型紙彫刻師です 　明治35(1902)年に三重県に生まれ昭和60(1985)年に死去されます。 　伊勢型紙道具彫の重要無形文化財保持者(人間国宝)でもありました。

中村勇二郎は型紙業の3代目である父の兼松の手伝いを小学校の頃から初め、大正4(1914)年高等科卒業時から伊勢型紙の道具彫りの技術を他の弟子に混じり本格的に父に学んでいきます。

　伊勢型紙とは、友禅、浴衣、小紋の柄や文様の生地を染めるのに用いるもので、その起源は定かではありませんが中世以降は存在していた歴史ある伝統工業工芸です。 　江戸期には紀州藩の庇護のもと隆盛しますが明治以降は一時不振になりますが、複雑な作業の糸入れに変わる技法の創案や、紙業組合、工業師弟学校の設立により伊勢型は盛り返してきました。 　型紙の文様は小紋と中型があり、彫りの技法には突彫、錐彫、道具彫、縞彫があります。 　中でも道具彫は刃物自体が一つの小さな文様単位となっており、小紋用に最も用いられる彫り法です。 　それ故文様の単位となる道具を多数そろえなければならないのですが、中村勇二郎は3千本にも及ぶ道具をもっていました。 　この本数の多さが中村勇二郎の経験の豊さと確かな技術を物語っています。

　中村勇二郎の父兼松の指導はとても厳しくキセルや物差しが容赦なく飛び交い、中村勇二郎はよく弟子の代表として叱られましたが理由は教えてもらえず自分で考えるようにと指導されることが多かったようです。 　道具彫り10年といわれる至難の業の修行にさらに厳しい父の指導を受けて、中村勇二郎 の道具彫りは誰もが認めるものとなっていきます。 彼の作品にはそうした試練に耐えてきた賜物でもあります。

昭和30(1955)年、中村勇二郎は他の伊勢型紙5人の技術者と共に伊勢型紙道具彫の重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けます。 また、昭和28(1953)年には昭和伊勢型紙彫刻組合組合長にもなり、昭和38(1963)年には伊勢型紙伝承者養成事業の道具彫り講師となり次世代の後継者の育成にも尽力した人物であります。 中村勇二郎の精緻で優美な型紙は長年の鍛錬と確かな技術が見て取れます。