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　志村ふくみは、大正13(1924)年の染色家です。 　紬織りの重要無形文化財保持者(人間国宝)でもあります。

　滋賀県近江八幡に医師の次女として誕生した志村ふくみは、2歳の時に父の弟の養女になります。 　彼女が17歳の時、今まで伯父と叔母だと思っていた実の親から出生の事実を聞かされ人生が一変します。染色を志していた実母と画家であった実の兄に影響され彼女自身も芸術の世界に魅かれ、実母に初めて機織りを習うようになります。 　その後、結婚出産を経た後志村ふくみは柳宗悦の民芸運動に参加していた母の影響で本格的な織物への道を決意します。 　昭和32(1957)年日本伝統工芸展に初めて出品し入選を果たし、その後第5回で奨励賞、第6回、第8回で文化財保護委員会委員長賞、第7回で朝日新聞社賞と数々の栄えある賞を受賞していきます。 　そして平成2(1990)年、これまで農村の手仕事だった紬織りを芸術の域にまで昇華したと評価され紬織りの重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されます。 現在は京都市右京区紫野に工房を構えたり、娘であり同じく染色家である志村洋子と芸術体験を学ぶ場を設立するなど後世へ紬織の美しさ、楽しさを伝えることにも精力的に活動されています。 ちなみに、志村ふくみの門下には紋紗の重要無形文化財保持者(人間国宝)である土屋順紀がいます。

志村ふくみの作品は心象風景を織りこんだ透明感のあるきらめくような織物であるのが特徴です。 特に草木から自然染料にこだわり染め上げられた糸によって織りあげられたその色合いは多くの人を魅了し、国際的にも高い評価が集まっています。

また、「民衆の知恵の結晶である紬の創作を通して、自然との共生という人間にとって根源的な価値観を思索し続ける芸術家」として、平成26(2014)年に、第30回京都賞を受賞し、平成27(2015)年には文化勲賞を受賞しました。

志村ふくみは色彩への探求心も旺盛で、ゲーテやシュタイナーの色彩論と、親しんできた日本の色彩を研究し、今なお自然から染めだされる色、その色から織りなされる染織の表現を探求し続けています。