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火入とは、煙草の火種を入れるための器で、煙草盆に仕込んで置かれます。煙草盆は、茶席の待合・腰掛待合・薄茶席に用意される道具一式で、火入の他に煙管（きせる）、煙草入、灰吹（はいふき・竹でつくられた煙草の吸殻入れ）とのセットで一揃えとして準備されることが常で、茶席において鑑賞と実用と両用途を供する重要な道具で、いわば客（ゲスト）に対する亭主（ホスト役）のバロメーターとも位置付けられます。持ち手付きの煙草盆に長い煙管を渡し掛けて置いた様子は、時代劇や歌舞伎などの舞台でも見たことがあるという人も多いでしょう。

煙草盆のセットの中で、火入は特に鑑賞面において中心的な重要品とされていますが、火入を収める煙草盆との調和、すなわち大きさや高さ、素材感や色彩などがぴったりとフィットすることはなかなか難しく、そこにまた道具の取り合わせの工夫の見せどころがあります。

火入には、火を容れると熱くなることや、金属製では煙草盆に仕込むには重すぎるため、陶磁器製のものが主に使われてきました。種類は、唐物（中国系）、高麗（朝鮮系）、国焼（日本国内で生産されたやきもの）など多様性に富みますが、染付、呉須、古赤絵、祥瑞（しょんずい）、青磁、織部、志野、備前、京焼などがよく好んで用いられます。大きさは煙草盆のサイズに合わせて種々ありますが、円筒形、角形、多角形、変形など幅広い形状が見られます。

火入としてつくられたものには、灰を入れて使うため内側の三分の二ほどは釉薬がかかっていない場合もあります。また、小ぶりなつくりの香炉（香を焚くための炉）や筒茶碗（円筒形の茶碗）、あるいは向付（むこうづけ・懐石料理を盛る小鉢）などの食器としてつくられた陶磁器を、火入として見立てて転用することもあります。

火入の中には灰を入れ、その中央に火種を入れて使用しますが。灰の盛り方の形や炭の入れ方については各流儀によって異なりますが、あまり大きな炭は使わないようにします。また、その際に灰匙（はいさじ）や火箸で火入に傷をつけないように十分な注意が必要です。使用後は、よく灰を落としてから湯通しをし、乾かしてから仕舞います。