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鉄瓶とは、飲み湯を沸かすために用いる鋳鉄製の器で、持ち手として上部に取り付けられた弦（つる）と注ぎ口を有しています。湯沸かし用の日用品として一般にも広く使われる鉄瓶ですが、茶道においては屋外的な用途として野点用の茶箱（携帯用の点前道具一式のセット）に仕組まれたりして、略式の点前で使われることもあります。

このようにもともと茶釜の携帯版として使われていた鉄瓶は、骨董品としても非常に価値が高いものです。特に日本国内東北地方で製作された鉄瓶の人気が高く、岩手県北部の鉄は刀の原材料としても用いられてきたほど硬質で、鉄瓶をはじめとする鉄製品を鋳造するのに適した鉄や砂鉄の産地としても有名です。その産地は、岩手県北部の盛岡から南部の石巻まで及び、石巻にはとりわけ多くの鉄器工房が古くから集まっていたことから、鉄器の銘柄として「南部鉄器」という名称と評判が広く拡大しました。

現代では人気の高さや加工技術の発展から機械によって製造されることも多い鉄瓶ですが、本来の製造工程に準じてつくられる鉄瓶は、一つ一つが熟練した職人による手づくりで、熱した鉄を流し込んで成形するための鋳型から熟練した職人の手によってつくられています。鉄瓶のバリエーションは、大きさや形状など様々な用途に応じて幅がありますが、表面には錆止めとして漆（生漆のみが使われる）を塗り、器の内側には「金気止め」と呼ばれる備長炭による焼き付け処理が施されます。伝統的な鉄瓶の彩色としては黒と赤のものが出回っており、黒色は鉄と漆と緑茶、赤色は鉄と漆などの工房秘伝の配合によって着色されています。

また、鉄瓶はその使用法や使い込んだ年月によって艶などの質感や肌表面の肌が著しく変化して生長することも特徴で、それが鉄瓶のたたえる景色として鑑賞上のポイントとして評価されるだけでなく、実用面において沸かすお湯に染み出す鉄分などのミネラルや湯のまろやかさが増すこともよく知られており、今日でもなお鉄瓶の人気が非常に高いことの一因となっています。

道具としての美と実用性を兼ね備えた鉄瓶の良さが再認識された現在では、欧米でもその人気が高まっており、表面の文様が様々なものや、グリーンやピンクなどこれまでにはなかった新しいセンスの鉄瓶も広く出回るようになっています。