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漆を使って装飾する漆芸の一種のことを蒔絵と言い、この蒔絵とはその名前のとおり蒔く絵という言葉から生まれ、下塗りや絵付け、さらに色付けなどのあと、金粉を蒔いて散らして豪著さや立体感を出す工程を言います。 さらに、これらの工程の前段階の下塗りやその後の上塗り次第で最終的な出来栄えにかなり大きな影響をもたらし、上塗り後のとぎだし工程が最終的にその作品を決定すると言ってもいいでしょう。 なお、装飾については金粉以外に箔や切か金を使った平文技法の他に卵殻、夜行貝やあわびなどといった貝お詰め込んだ螺鈿細工といったものは蒔絵とは区別されているようですね。 また、作品の表面を彫り込んでその部分に粉や箔を落としこむ沈金というものとも違っています。

さて、万年筆と漆には長い歴史があり、万年筆が生まれた当時工業規格品に使われた材料というとエボナイトと言われる硬質ゴムくらいしかありませんでした。 このエボナイトとは成形しやすく、硬いため職人にとっては便利でしたが、いっぽうでゴムが原料だったため基本的に色は黒しかなく多様性がなかったようです。 その後、セルロースを主原料としてしょうのうやアルコールを混ぜたセルロイドが発明されたことで、華やかな色とりどりの柄が生まれ、商品が多様化していきました。

このように今誰もが日常的に使っているプラスチックの成形品に取って代わられたことは有名な話です。 エボナイトを万年筆の軸の材料にしていたメーカーは当時多かったですが、エボナイトという成分は紫外線などにとても弱く、長期間経過すると手の汗などに反応してしまい、変色するデメリットがありました。 このため、エボナイトの表面を何かで保護する必要があり、これに漆が使われるようになったというわけですね。

なお、蒔絵の代表作として雁来紅蒔絵香合などがあります。 この作品は実に写実的で芸術性の高いものです。