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植物画とは博物画のひとつで、草木を科学的な観察をもとに仔細に描いたものです。科学研究のために用いられたため背景は描かず、またそれでいて観察に基づいた表現を重視するという点で長く図鑑や調査記録のために用いられてきました。現在植物画を描いた歴史上一番古い書物として確認されているのは512年に出版された『薬物誌』であるとされています。これは古代ギリシアの医者、薬理学者、植物学者であったペダニウス・ディオスコリデスが書いたものです。

ディオスコリデスはローマ皇帝ネロの時代に活躍し、薬理学と薬草学の父と言われています。ギリシア・ローマ世界のいたるところに軍医として旅する機会があり、そうした経験を全5巻からなる『薬物誌』にまとめ、母語であるギリシア語で記しました。もともとテキストのみの書物でしたが、原著が公開されたから100年後にはクラテアウスが『薬物誌』の図版を付記したと言われています。

中国では明の李時珍が27年の歳月をかけ800種以上の薬草をその効能とともに『本草綱目』に記しました。全52巻、1109枚もの図版から成る本書は、1596年に南京で上梓され、本草学の基本書として日本でも輸入されることになりました。定期的に発行された植物画雑誌としては『カーティス・ボタニカル・マガジン』が有名で、1782年に園芸及び植物学の雑誌として発行されました。

キューガーデンで働いていたウィリアム・カーティスが創刊し、その豪華さもあって大変有名になりました。図版は手彩色された銅版画で、花の断面図も添えられ1ページまたは2ページの花の性質や歴史の解説文が添えられていました。初期の植物画はシデナム・エドワーズが描き、手彩色のために30にもの作業者が雇われていたと言われています。現在もキュー・ガーデンが出版し続けており、現在もなお植物画に関心が向けられていることが伺えます。