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戦争画とは戦争を題材として戦闘場面や戦士の出征、凱旋、戦時下の市民生活などの諸場面を描いたもので、勝利者あるいは勝利国がその権威を見せつけるため、あるいはプロパガンダとして用いられました。

西洋で重要な戦争画としては《ワーテルローの戦い》や《デラウェア川を渡るワシントン》などが挙げられますが、近年の戦争画として有名なのはピカソの《ゲルニカ》でしょう。1936年7月に第二共和政のスペインでスペイン内戦が勃発し共和国軍率いるマヌエル・アサーニャと反乱軍率いるフランシスコ・フランコが争っていました。

共和国軍を支持していたパブロ・ピカソはフランコを風刺する内容の詩『フランコの夢と嘘』を記し、これをもととした銅版画を制作していました。内戦中の1937年、共和国政府はピカソにパリ万国博覧会のスペイン館を飾る壁画の製作依頼を行い、これが後の《ゲルニカ》の下地に成ることになります。1937年4月になるとナチスドイツ軍によって無差別爆撃が行われ、ビスカヤ県のゲルニカは甚大な被害を受けました。この襲撃を知ったピカソは壁画の主題にゲルニカの爆撃を選んだと言われています。

日本においても1937年日中戦争勃発後、陸軍省が大日本陸軍従軍画家協会を設立し、戦地に従軍画家を派遣するようになりました。その中には藤田嗣治、宮本三郎、中村研一らの画家が所属していました。1940年には「紀元二千六百年記念奉祝美術展」や1942年には「大東亜戦争美術展覧会」が行われ、陸軍のプロパガンダとして用いられたものの1945年には敗戦、1946年GHQにより戦争記録画は没収され、アメリカに運ばれました。1970年には日本に無期限貸与という形で返還され、現在東京国立近代美術館に収蔵されています。従軍画家は批判にさらされることも多く、藤田嗣治は日本を出てフランスに帰化し、フランスでその生涯を終えています。描くものも戦争という悲惨なものであれば、それを描く画家たちも批判にさらされる、それが戦争画の定めなのかもしれません。