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水彩画の歴史は非常に古く、旧石器時代のアルタミラやラスコー洞窟に描かれた絵画にまでさかのぼると考えられています。少なくともエジプト王朝時代から写本の彩色に水彩は用いられ、中世ヨーロッパでも写本の彩色のために用いられてきました。ドイツの画家アルブレヒト・デューラーは植物や動物、風景において優れた水彩画を残しており、水彩画の歴史において最初期の代表的な画家であると考えられています。こうした流れにハンス・ボルなどが続き、水彩画の流派が誕生しました。

こうした古い歴史がありながら、水彩はスケッチや模写として用いられることの方が多い技法でした。初期の水彩画ではヴァン・ダイクやクロード・ロラン、オランダやフランドルの画家たちが錚々たる作品を残しています。そのほとんどは植物画や生物画であり、精巧に表現することができる水彩画が好んで用いられました。その傾向は今でもなお続いています。

ヨーロッパでもイギリスはもっとも水彩画が広く普及した国です。貴族の子女、特に女性にとっては教養の一つとなっており、かつ鑑定家や測量士、軍人などが現場で地勢を記録する際に広く用いられていました。古代ギリシャやローマ美術の研究のスポンサーとなったイギリス貴族の協会であるディレッタンティ協会では、地質学や考古学の研究のためにアジアやアメリカ、地中海に赴いた折には、水彩画家が同行するのが常でした。このころ貴族若者が各地をめぐるグランドツアーが人気になっており、その土産物としての絵にも水彩画は用いられました。

こうした広まりを受けて、アマチュアの活動や出版の需要、中産階級の美術収集などを支援する英国王立水彩画家協会の全身である水彩画家協会や新水彩画協会、スコットランド水彩画家協会が設立されました。こうした協会が足がかりとなり、ヨーロッパ中に広まっていったことは言うまでもありません。その手軽さもあり現在でも人気の水彩画。古い歴史を重ねてもなお、新しい表現を生み出し続けています。