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風景画とは山や渓谷、木々や河川、森などの景観を描いた絵画のことで、絵画の中でも最もポピュラーなジャンルの一つです。その歴史は古く、古代ポンペイの遺跡には1世紀頃のローマ帝国時代のフレスコによる室内装飾が残されています。東洋においても中国では墨を用いた風景画が描かれ、10世紀には山水画がよく描かれるようになりました。

15世紀になるとヨーロッパにおいて風景画がひとつのジャンルとして確立し、そのなかにエジプト逃避中の休息や東方三博士の旅など宗教的な主題を織り交ぜる形で描かれていました。17世紀のオランダでは豊かになった市民階級の家を飾るための風景画が確立し、専門的な風景画家が登場しました。オランダは国土が平坦なことから空と雲が特長的に描かれました。

19世紀になるとヨーロッパでは自然主義が主流となり、理想化された風景を室内で描く従来の風景画とは異なり、野外に出て直接観察しながら風景を描くバルビゾン派が生まれました。19世紀半ばになると写真が実用化されたために写実主義に代わる絵画独自の方法を模索していたヨーロッパ美術界で葛飾北斎の「富嶽三十六景」や歌川広重の「東海道五十三次」などが紹介され、大胆な画面構成や鮮やかな色彩が風景画に活かされるようになり、ジャポニスムや印象派をうみだすきっかけになりました。

アメリカでは19世紀中頃から末にかけて活躍したハドソンリバー派により、理想とする叙事詩的絵画を描くため巨大な作品を制作しました。そこには新大陸アメリカのみなぎる力強さを感じることができます。カナダにおいてもその大自然を記録するために風景画が用いられました。

その表現には写実的なものから空想的なものまでさまざまな表現が含まれており、1920年代のグループ・オブ・セブンの作品に見出すことが出来ます。そのテーマの身近さから現在もなお人気を集め、また愛好家も多く存在する風景画。そこには風景とともに歴史と描いた人々の思いが込められています。