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ファインアートとは、日本の芸術とほぼおなじ定義の言葉ですが、ヨーロッパでは応用芸術、大衆芸術と区別する際に使われる言葉です。美術分野で言うと、ファインアートは絵画、彫刻であり、これに対しイラストレーションやデザイン、工芸は大衆美術や応用美術に当たりますが、20世紀後半になるに従ってその境界は曖昧になりつつあります。

応用美術や大衆芸術特別されるファインアートの概念は18世紀後半のヨーロッパにおいて確立しました。主に芸術的価値が高いものをファインアートと呼び、実用的な価値をもつものを応用芸術と呼ぶようになりました。ファインアートが属する文化をハイカルチャー、これに対する文化を大衆文化、サブカルチャーと呼び、音楽の場合ハイカルチャーではクラシック音楽が、サブカルチャーではポピュラーミュージックや民族音楽が属す点からも様々な分野が二項対立となって育まれていきました。

その後20世紀になると社会の変化を反映して既存の価値を破壊することに価値を置くダダイズムが生まれます。マルセル・デュシャンが1917年にニューヨークのアンデパンダン展で男性用小便器にサインを入れたのみで《泉》と題して出品した、あるいは1952年にジョンジェ―じによる終始無音の「4分33秒」が発表されたなどファインアートにも応用芸術にも属さない作品が制作されるようになりました。20世紀後半になってアメリカの経済発展が進むとポップアートが盛んになり、現代では版画や写真、映像もファインアートの一部として認知されるようになっていきました。ニューヨーク近代美術館やフランス国立近代美術館がデザイン分野を扱うようになってきているのもその流れを如実に表しています。

また1986年には応用美術や現代美術をファインアートとともに扱うオーストリア国立工芸美術館が開館するなど、総合的に扱おうとする流れも広まっており、ファインアートから包括的なアートに向かっていることが伺えます。