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テンペラとは、卵白など乳化作用を持つ物質を用いる絵画技法のことをいい、混ぜあわせるという意味の「temperare」というラテン語を語源としています。19世紀の産業革命によってチューブ入り絵の具が生産されるようになるまで画家は顔料と定着剤を混ぜあわせて使っていたため、テンペラという言葉になりました。

テンペラには乳化剤として卵を用いる卵テンペラ、蜜蝋などを用いる蝋テンペラ、カゼインなどを用いるカゼインテンペラなどがあります。代表的なテンペラ技法が卵テンペラです。絵の具が乾けばすぐに塗り重ねていくことが出来、数日間乾燥すると水に解けなくなります。卵テンペラにもさまざまな方法があり、卵黄と顔料、卵黄と油と顔料、卵黄と油と水と顔料など、画家は試行錯誤を繰り返して最も表現したい色に近づけようとしていました。カゼインテンペラで用いられるカゼインは牛乳やチーズに含まれるタンパク質の一つで、メディウムや接着剤として用いられる物質です。乾燥後は耐水性をもち、温度に左右されにくい性質をもっています。また膠テンペラでは、卵やカゼインと同じように乳化作用を持つ膠を用いる方法です。

テンペラによる絵画作品はイタリア・ルネサンス初期から残されています。ジョットの《荘厳の聖母》やフラ・アンジェリコの《受胎告知》、ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》などの作品が多く残されており、レオナルド・ダ・ヴィンチも《最後の晩餐》で使用しましたが、壁画には不向きな技法であったため、作品を劣化させる原因の一つとなってしまいました。油彩画が主となってからはテンペラ画を用いる画家は減少の一途をたどりましたが、20世紀に入るとパウル・クレーやカンディンスキーのような画家たちが油彩との併用による混合技法を用いるようになりました。アメリカのアンドリュー・ワイエスも用いるようになったことから、テンペラ技法は絵画技術として年々注目を集めています。