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静物画は西洋絵画のジャンルの一つで、花や頭蓋骨、貝殻、野菜といった静止した自然物や陶磁器、パン、楽器といった人工物を対象とします。静物画の歴史は古く、古代ローマ帝国のポンペイ遺跡から高さ90cm以上の大きな静物画の壁画が複数出土されています。ローマ帝国の崩壊とともに一旦中断されるものの、主要なジャンルとして静物画は制作され続けていました。

15世紀になると、静物画は宗教画の一部や豪華本挿絵の一部として発達するようになりました。ヤン・ファン・エイクのヘントの祭壇画ではタオルや水盤といった日常的な静物画が描かれており、ハンス・メムリンクの《若い男の肖像》の裏面に描かれた《花瓶の花》は独立した静物画としては最古の作品とされています。

純粋な静物画は1600年前後ベルギーやオランダ、イタリアやスペインで描かれるようになります。特にオランダではプロテスタント信仰が盛んであったため、宗教画や神話画よりも静物画や風俗画、肖像画、風景画などの需要が高まり、徐々に主流となっていきました。ベルギーでは、ヤン・ブリューゲルが「花瓶の花」というジャンルを開拓しました。他にもピーテル・クラースやウィレム・カルフなど多数の静物が専門の画家が排出されました。

イタリアではカラヴァッジョが《果物籠》といった静物画を開拓したものの、絵画の主流と成ることはありませんでした。スペインでは修道士であるサンチェス・コターンが台所画という分野を開拓し、ルイス・メレンゲが続きました。フランスでは18世紀になるとシャルダンによって独自の静物画が発表され始めます。19世紀になるとアンリ・ファンタン=ラトゥールやセザンヌ、ゴッホなどによって独自の静物画が描かれるようになりました。

ローマ帝国からの古い流れを持つ静物画は現代になるとジョルジョ・モランディやハイパーリアリズムのような新しい表現として見いだされるようになりました。その静謐な空間は今なお注目を集め続けています。