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人物画の歴史は古代シュメール文明の彫刻群やエジプト古王国時代の王や首長たちの像からはじまりました。この場合特定の個人の表現はあるものの、王や首長たちの神格や権威の表現が主であるため、近代の人物像とは異なっています。その後古代ギリシャにおいても、オリンピックの勝利者の像などでもこうした個人の表現が色濃く見られることはありません。

その後徐々に個人に目が向けられるようになり、ソクラテス像など個人の人物像が作られるようになりました。ローマ時代になると個人への関心はより高まることになり、皇帝や貴族の人物像は個人の特長が明確に表わされるようになりました。このころから壁画などにも大衆の人々の人物画が描かれるようになります。

人物画としての始まりは、ローマ時代のエジプトで発見されたギリシア・ローマ風の技法とエジプト埋葬の儀礼の混合から生まれたミイラ肖像画が最初期であると考えられています。これはミイラを収めた棺の上に在りし日の故人を模した人物画を貼り付けるというもので、故人のおもかげが色濃く残された人物画が用いられました。中世になっても神の前では個人はきわめて小さな存在で、市民社会の発達によって個人に目を向けられるようになるまで人物画は影の存在で在り続けました。

徐々に個人に目を向けられるようになった一例としては、パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂のジョットの壁画で、この壁画の中で寄進者であるエンリコ・スクロヴェーニは教会を捧げています。この人物画は個人の特長をよく捉えいます。15世紀になると人物画は最盛期に入り、イタリアでは主としてプロフィールが鋭い輪郭線で描かれるようになりました。これはルネサンス期において個人の自覚が芽生えたためであり、その後16世紀17世紀になるにつれて王侯貴族や市民階級の実力者からの発注が増加したという点で主要なジャンルとして確立していくこととなります。