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風俗画とは、普段の生活を描写し作品のことで、親しみやすく感情的な主題が多いことから中産階級に好まれたジャンルです。西洋絵画において確立していた絵画ヒエラルキーにおいて、宗教画や神話画、歴史画がグランドジャンルと呼ばれるのに対して、風俗画はプティジャンルと呼ばれていました。風俗画の主題は古代から幅広く見ることが出来ます。古代エジプトの王墓には祭りや農作業の様子を見て取ることができるし、中世においても《ベリー公のいとも豪華なる時祷書》においても農民の日常的な生活が描かれています。

こうした風俗画流行の背景にはプロテスタントの勃興がありました。宗教改革の嵐が吹き荒れたヨーロッパにおいて、商業の中心地として力をつけつつあったネーデルランドではプロテスタント信仰が主流でした。プロテスタントは聖書を信仰の拠り所とするため、カトリックのように宗教画を必要とする事がなく、宗教画の発注は少ないものだったといいます。

しかし家に絵を飾ることが一種のステータスであったネーデルランドでは宗教画の代わりに日常の生活を描いた風俗画を求めるようになりました。こうした風俗画にはキリスト教の教えや当時のネーデルランドの情勢が暗喩のように織り込まれていることが多く、絵解きの面白さが見られます。18世紀になると徐々に社会風刺や教訓を盛り込んだ作品が好まれるようになり、ウィリアム・ホガースやウィリアム・フリスがイギリス活躍しました。スペインにおいてもフランシスコ・デ・ゴヤが風俗画を画家としての重要な条件にあげています。

20世紀に入り様々な表現が満ち溢れた中でも、画家の視線は日常生活に向けられています。アメリカで言えばエドワード・ホッパーやノーマン・ロックウェルなどがその例にあげられるでしょう。日常生活で人が見せるふとしたしぐさは、画家を惹きつけ続けるテーマなのかもしれません。