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　民族とは一定の文化的特徴を基準として他と区別される共同体のことを言います。土地・血縁関係・言語の共有や宗教・伝承・社会組織などがその基準となると言われています。しかし、普遍的な客観的基準を設けても概念内容と一致しない場合も多いと言われています。このことから、民族への帰属意識という主観的基準が客観的基準であるとされることもあります。また、日本語の民族の語には、近代国民国家の成立と密接な関係を有する政治的共同体の色の濃い「nation」の概念と同一の文化習俗を有する集団としての「ethnic group」の概念があります。

「nation」には国民と言う意味があります。国民とはある特定の国において、その国の国籍を持つ者を言います。国民と対比して、その国の国籍をもたない者を外国人と言います。日本国内では、国民の要件が日本国憲法における国籍法で定められています。一方で、「ethnic group」については政治的共同体の形成や集合的な主体をなしているという意識の有無とはかかわりなく、同一の文化習俗を有する集団として認識されています。現在の日本では、「nation」と「ethnic group」の概念の双方が十分区別されずに共存しています。

現在、より実用的な定義として、母語による定義があります。具体的には、ウラル語族を母語とする民族はウラル系民族、テュルク諸語を母語とする民族はテュルク系民族などと定義されています。この場合、民族のくくりは言語のそれと等しくなり、言語によって民族が一意に定まります。

次に、民族に関する本を紹介します。まず、綾部 恒雄『世界民族事典』を取り上げます。この本では、世界の民族を網羅し、民族名から民族の居住地・人口・言語・宗教・文化等の個別詳細情報が載っています。地域・国家名から民族構成・民族間関係・民族の移動・言語状況等の歴史と現状を示した、「民族」を立体的に捉える事典です。

2冊目は月村 太郎『民族紛争』です。世界各地で民族紛争が続発しています。ニュースなどで耳にしない日はないと思われます。どのように発生・激化し、そして終結へと向かうのか。クロアチア・ボスニア・コソヴォ・ルワンダ・スリランカなど6つの紛争の経緯を詳しく紹介し、軍事介入やジェノサイドの実態などについて考察しています。さらに民族紛争に関する研究の論点を整理し、紛争予防や平和構築の可能性を検討しています。