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安部榮四郎は1902年に八雲町で生まれ、家業であった紙すきを自分自身の探求心と努力によって極めた人で、伝統技術に個性を加えた色彩豊富な創作和紙である、出雲民芸紙を作った人です。さらに、彼は人間国宝としても認められています。

出雲和紙業界において多くの功績を遺した彼ですが、明治や大正時代までは八雲町別所地区の和紙作りというのはほとんど知られておらず、それに変化が起こったのは1931年のことでした。民芸運動を起こした柳宗悦氏が松江を訪れ、雁皮という木の皮でできた彼がすいた和紙を見てこれこそが日本の紙だと言ったそうです。その言葉をきっかけとして、彼も民芸運動に参加しました。

彼は和紙の持ち味を活かした和染紙やこうぞ、みつまたといった植物の繊維を活かして作った生濾紙などを発表し続け、全国に熱心な愛好家を増やしていきました。これが出雲民芸紙の誕生であり、その後も技におぼれたりせず、個性あふれる名紙を作り続けていったのです。1968年になると、雁皮氏を漉く伝統的技術が高評価を受け、重要無形文化財に認定されました。現在彼の心と技は彼の孫である信一郎氏や紀正氏へと受け継がれています。

たくさんの人たちに和紙のすばらしさを知ってもらい人生をかけて集めてきた貴重な資料や民芸品を公開・保存するため、栄四郎自らが設立した安部榮四郎記念館というものがあります。彼が漉いた和紙を中心として、暮らしに溶け込んだ紙布や紙衣、こより細工などといった和紙製品を選りすぐり、展示しています。さらに、用の美を唱えた民芸運動をする中で、彼の製作活動に大きな影響を与えてきた陶芸家である河井寛次郎や浜田庄司、板画家である宗像志功らの美術品や、紙に関しての貴重な資料などといった資料なども所蔵されています。

あまり知られていない和紙の魅力がたっぷり楽しめ、原料とされる、みつまたやこうぞといった植物のそれぞれの持ち味を活かしたこの和紙は素晴らしい風合いを醸し出しています。