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中島宏氏は先日、龍泉などの中国の古い窯を再び訪れました。湖の水辺や草におおわれた窯の跡から陶器のかけらを拾ってルーペで丁寧に見る様子は子どもがまるで宝物を拾ったかのように輝いていたそうです。中島氏によると、国の文化財に指定されている青磁器17点のうちどれも龍泉で製作されたもので、この青磁の美しさを追求してきた彼は、その源流を訪れた旅のことをご先祖様のお墓参りと言っています。彼はまた、名品を生み出した環境や原料がそろっている場所だということが分かりました、松の木ひとつひとつにも感動した以前の旅と比べて、今回は冷静に見ることができたとこの二回目の龍泉の旅について語っています。

なお、中島氏は磁器を作る窯元に育ちましたが、家業を好きにはなれなかったそうです。その理由としては、泥だらけのつらい仕事だったからとか。その後転機となったのは父親に連れて行かれた窯跡の調査でした。古唐津や染付の中に混じった青磁のかけらに光るものを感じたからです。

さらに、幸田露伴の本の中にあった心をこめることができる仕事、という言葉も後押しをしました。青磁は難しいと周りから言われ続け、逆にそれが自分なら存在感のある作品が作れると進む道を決意し、窯跡を歩いて文献を調べ、手探りで進んできました。土や釉薬の研究には限界がなく面白い。また、うまく磁器が焼けてもこれがいいと決めず常に変えることを実行してきたと日々新しい挑戦を続けてきました。

また、中島氏は作品を作る喜びを自分だけのものという快感とも言っています。常に白紙の状態からスタートするという姿勢は、作陶の技法にも表れています。中国の青銅器に触発されてそこに彫りを入れ、かき落しを手掛けています。印象派の絵によって釉薬を重ねて色に深みを出すということにも挑戦しています。

彼は、この龍泉の旅において博物館でたくさんの名品を見ることができ、先人の仕事で勉強した上で、しばられない作品作りをしたい、誰も見たことのない世界や、自分にしか見えない夢を追い続けていきたいと語っています。この中島氏の代表作としては、粉青瓷線彫文壷というものがあります。