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高野松山という蒔絵職人についてご存じでしょうか？彼の略歴と代表作品についてご紹介したいと思います。

高野松山は明治22年に熊本で生まれ、明治44年年に東京美術学校漆工科に入学し、白山松哉のもと修行し、師がなくなった後に松山の号を贈られました。また、熊本出身のため旧肥後藩主であった細川護立公爵の後ろだてによって教師時代大正13年に細川邸に転居。昼間は殿様のボディガードとして、夜は製作、といった生活を送りますが、他の教師達からは住む所にも不自由しないと羨ましがられました。

昭和30年には松田権六とともに蒔絵の重要無形文化財に指定されます。なお、彼は細川家との関係によって作品はそれぞれの美術館と永青文庫にほとんどが収蔵されています。彼の製作態度は一環してとてもまじめで、何度か吐血するような病気にもかかったようですが、製作を途絶えさせることなく亡くなった際も製作中の作品を手に持っていたという逸話が残っています。なお、昭和時代まで製作を続けましたが作品はまさに幕末明治時代の名工達と並べるほどのものだったそうです。

彼の代表作としては「鍬形・冑虫蒔絵根付一対」というものがありますが、これは昭和39年に銀座松哉で開催された工芸聚珠会展に出品したもので、虫の部分は赤みがかった焼金、背景は黄味の強い小判の金粉によって虫を浮き上がらせています。同じ小判の金粉でも鍬形は赤みを帯びており、冑虫は青味で変化がつけられているようです。また、中の細工も大変すばらしく、箱をあけたとたんため息が出るほどです。

なお、箱形根付けなので底の穴からひもを入れてふたについたひも通しにひもを通して底の穴にひもを入れますと箱が縮まって根付けになります。蒔絵高野松山序文の松田権六92ページに作品の写真や99ページには作品の解説、さらに118ページに製作中の写真がありますが、気の遠くなるような緻密な仕事ぶりが覗えます。1度素晴らしい彼の蒔絵をご覧になってみて下さいね。