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豊かな森林に恵まれている日本の木工芸は、鉄製の工具の普及や大陸からの技術者の渡来などにより発展し、正倉院の木工品などは現代の木工芸におかなり大きな影響を受けていると言えるでしょう。その後、日本特有の素材を活かした和風かが進んで、近代では木工芸のそれぞれの分野に名匠が現れており、日本の工芸の重要な一部門として認知されました。

この木工芸には大きく分けて、指物とくり物、彫物、挽き物、曲げ物といった技法があり、どれも長い時間をかけた入念な行程を経て、素材の特性を活かした製作が行われています。刳物とは、かんなやのみ、小刀などを使って木の手で刳って成形する技法のことで、一般的には欅などの硬い木が使われているようです。中臺瑞真は、千葉県に生まれ、上京して始めは桑や杉、桧や桐などの素材の指物や、透彫などの木工芸の技法を幅広く身につけていました。しばらくして独学により刳物技法について研究をはじめ、伝統的な木工芸の技法を幅広く習得していったのです。

茶道具の棚物や箱などといった指物の作品も多く作っていますが、桐材を使った刳物に一番特色があります。 なお、桐材は非常に柔らかいので、大体の形を作ることは簡単ですが、表面を美しく仕上げるのはとても難しく、高度な技術が必要です。銀色の輝きをした杢が多い会津桐や、細かい柾目の南部桐など、良質の材料を吟味して使い、刳物特有の曲面と素材の木肌の清潔な美しさを表現した作品を作り、独自の作風を築いていきました。「桐菱形輪花盛器」を製作していく過程において、粗彫りする前に花弁の輪郭を鋸で切り落として、刳りだしに移っていくのですが、その段階から桐の木目をどうやって活かすのかを考えながら刳り貫く場所を選んでいます。仕上がった作品を見てみますと、それぞれの花弁に合わせて木目が鮮やかに入っているのが分かります。

彼の作品には他に桐木地六弁筥、桐六弁筥、桐拭漆菱形輪花箱（きりふきうるしひしがたりんかばこ）などがあります。